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同志社大学を中心に活動する学生劇団、演劇集団Qの日記
参加者10人の脳味噌は美味い
2020年02月14日 (金) | 編集 |
ジーザス・クライスト・トリックスターでは筒井康隆という人間が妄想するところの、「もしかしたらこうなったかもしれない。」が描かれます。「こうだった」と「こうなったら」の巧妙な差異から驚きや笑いが生まれるのです。劇を見て、いつ間にか平行世界にはまり込んでしまったように感じる人もいるかもしれません。
ところが、我々は妄想の並行世界を上演するのではないというところから、創作を始めることになります。聖書-筒井康隆の戯曲-演劇集団Qの直列回路を組む過程が、序盤の稽古でした。

〇分析と情報収集
筒井康隆が聖書をどう料理したかを分析しました。料理というのはおそらく無限に作れます。
筒井がどの素材を選び、どう加工し、何の調味料を使って、どんな盛り付けをしたのか。果ては、どんなレシピを参考にしたのか。
参考にしたレシピは、『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1971年ブロードウェイで初演)というロックミュージカルでしょうか。

1.素材
素材は、言わずもがな聖書です。旧約聖書と新約聖書、全てを学んだとはとても言いきれませんが、概論を皆で学びました。聖書を教科書として、参考書、資料集、映像授業、受験の講義録など使えるものは全て机の上に広げて、10人全員が勉強しました。今公演から新しく稽古場の壁に設置したホワイトボードは既に黒ずんでいます。
結局、6週間の稽古のうち、最初の2週間は、全く演劇をすることなく過ぎてしまいました。少し焦ったのも事実ですが、この勉強が後になって生きてくることを皆信じ、勉強しなければ薄っぺらい演劇になるという恐怖も持ちつつ、踏んることができました。

2.加工
素材の加工については、戯曲に出てくる全ての文や単語を徹底的に調べ、出典をあたりました。ほとんど、新約聖書のマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの福音書が出典でした。出典を当たることで、出典が改変されていたり、出典がない部分は筒井康隆のオリジナルということが分かります。

3.調味料
調味料は演劇で言うと、おもしろみ=旨みの部分です。『ジーザス・クライスト・トリックスター』は初演が1982年ですので、そのおもしろは、当時の空気感や時事ネタを知っている必要があります。それらも調べ上げました。

4.盛り付け
上演記録が映像として残っていないので、盛り付けは想像します。演劇的な部分です。

〇解釈
タイムマシンに乗って2000年遡ります。その動力源は、ひとつに繋がれた参加者10人の脳と演劇の身体です。脳の中で具現化したタイムマシンに乗るとも言えます。戯曲を紐解いて作った筒井康隆オリジナルレシピを見ながら、西暦0年前後のキッチンで、オリジナルクッキングがスタートするわけです。

包丁で切れという命令が脳から伝わります。我々の脳には、2020年までの「人間と出来事と空気」が詰め込まれています。手に、包丁に、食材に、それらが順に伝わります。料理の完成はまだまだ遠いです。6週間しかありませんので、作った料理を再びタイムマシンに乗って、急いで持って帰ってきます。

稽古は味見の繰り返しです。

2020年同志社大学新町別館小ホールで食べてみてください。笑いの毒が入っているかもしれません。

文:本田哲男
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